ありえない高校生マリッジ

彼女たちは私にまだ言いたげだったけど、諏訪部先輩に睨まれて退散してしまった。

「大丈夫か？那岐ちゃん」

「ありがとうございます」

「顔色、悪いけど…何言われた？」

「いえ…大丈夫です」

「そう？」

諏訪部先輩は心配そうに私を見る。

「私、教室に戻ります」

「・・・無理しなくてもいいんだよ。那岐ちゃん。俺知ってんだ。君が頭取の愛人の子だって・・・」

「えっ？」

「頭取から命令されている。敦司に那岐ちゃんを近づけさせるなと」

「どうして？」

諏訪部先輩の顔が急に沈鬱になった。


「俺はもう御曹司じゃないんだ・・・」

諏訪部先輩の父親は東京で病院を経営していると訊いていた。

「父は医者の腕は良かったんだけど…経営の腕は良くなくて、病院を潰してしまった。
父はそれを苦に自殺。病院の跡地にはタワーマンションが建てられている。
この学園は由緒があり、御曹司と令嬢が通うセレブの学園。
親がそんな風になったら、本来なら退学を余儀なくされる。
でも、俺の父親は敦司の父親の総理と知り合いで、総理の顔で､居させてもらっている身だ。だから、総理の弟である頭取の命令には逆らえない」