ありえない高校生マリッジ
「お父さんは渚君のコト、ずっと忘れていなかったですよ」

私は持っていたハンドタオルを渚君に差し出し、隣に腰を下ろした。

「お父さんに一度、訊いたコトがあります」

「!?」

「私の名前の由来を」
渚君は黙って、涙を拭きながら訊いてくれた。


「お父さんにとって、二番目に大切な人の名前だって…ちなみに一番はお母さんです」


「なんだよ。それ・・・」

「お父さんは私をいつも誰かに重ねている。そう思っていました。
この屋敷に来て、同名の渚君に会って・・・お父さんが二番目に大切にしていた人に出会えました」

「鷹栖のヤツ・・・」

「お父さんはずっと・・・渚君のコトを気に掛けていたと思います。
でも、捨てられた方の渚君の落ち込みは酷かった中田さんから訊きました。それを見ていた歳三様が自分の亡き後の渚君を気に掛け、自身の病を隠したんだと思います」


「期待と責任だけを押し付けられて、父さんの安心の為にお前と結婚までさせられた・・・全く、こっちからすれば、たまったもんじゃない」

「渚君・・・」

渚君は私にタオルを返した。

「もう、泣かないんですか?」

「俺には泣いてるヒマはない…部屋に戻って仕事する」

「渚…君」

「部屋に戻るぞ。那岐」

「はい」



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