秘密のMelo♪y⑤*NY編*

おかしいとは思ってた。

入院してた時からずっと……体中痛くって、最初の頃なんて痛みで眠れないくらいで。

数時間おきに痛み止めを点滴してた。

それなのに…。

それなのに、この左手だけは、一度も。


…一度も、痛みを感じたことがなかった。


『…やはり…お父様…』


『……そう、ですか…』


「…なに? 父様…」


俯く先生の顔。

珍しく真面目な様子の父様。

…父様が真面目な顔してるときなんて滅多にないんだから、ロクなことがないに決まってる。


「…どういう意味だ」


『マヒロさん、よく聞いてください』


『は…?』


『今は、さっきも言った通り筋肉が強張っているということもあります。リハビリをすれば、多少動くようにはなるでしょう』


『……』


『少なくとも、日常生活にさほど支障がない程度には…』


『……!』


それ……。

それって…まさか…。


『しかし』


……心臓が一気に大きく鼓動し始めた。


『しかし…』


…やめて。聞きたくない。


『……バイオリンをすることは、もう二度と叶わないでしょう―…』


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