藤井先輩と私。
まぁ、いいか。


「おじゃまします」


気を取り直して、先輩の家に一歩足を踏み入れた。


「そこにスリッパあるから」


「あ、はい」


来客用のであろうスリッパをはくと、一歩一歩中に進んだ。


「ごちゃごちゃしとるやろ?陽依が来るって分かっとったら、片づけてたんやけど」


廊下には様々なオブジェらしきものが置いてあり、こういうレイアウトしてるのかなって思ったけれど、それはただ片づけてないだけらしかった。


「この作品って」

「あぁ、俺が作った」

「すごいです!」

インテリアのデザインだけじゃなくて、こんなアーティスティックなオブジェとかもつくれちゃうんだ。

「そんなに褒められると照れる…」


頬を赤くする、藤井先輩。


「さ、ここがリビングや」


先輩が廊下の突き当たりのドアを開けると、白と黒で統一された、いかにも男の人の部屋らしいリビングが広がっていた。


リビングのソファーに、すでに“アンナ”さんが座っており、ふてくされた顔をしてこっちを見ている。



「いい加減に、機嫌なおせ杏奈。ほとんど初対面の陽依に失礼やろ」

「だってぇ」


ほら、今の言い合い。

恋人同士って感じがしない。

もっとしっくりくる関係がきっとあるはずなんだけど、幼馴染?いや、違う。

もっと…なんだっけ。



「ほら、自己紹介して、仲直りし!」

オカンのような口ぶりで、藤井先輩は“アンナ”さんを立たせた。


「分かった。あたしは藤井杏奈…、中2。ハイ終わり」


自己紹介してもらったし、私も自己紹介しなくちゃ。

「私は、橋宮陽依。高1です。よろしくね?」


この子年下だったんだ。

藤井杏奈ちゃん。



「あ、先輩と同じ苗字なんですね」



「え?だって杏奈は俺の妹やで。苗字一緒なんは当たり前」




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