藤井先輩と私。
これは藤井家の問題であって、私が関わっていいことじゃない。

…でも、二人は私にいて欲しいと言ってる。

うーん。



そう考えていると、いつのまにか藤井先輩の家の玄関まで来ていた。


手元をみると、まだパパさんが私の腕を掴んでいる。

ここまできた以上、逃げませんよ…。



玄関が開いた瞬間。


「おうわぁっ」

という、先輩の悲鳴?が聞こえた。


手元から目の前に視線を戻すと、杏奈ちゃんが先輩に抱きついていた。

「どこいってたの!悠太私さがし……………オトン」




杏奈ちゃんは、先輩の背後にいるパパさんを発見して、すぐに先輩から降りた。


「あたしが連れ戻せなかったから…来たん?」

「ちがう」

「…違くない!オトンの嘘つき!」


杏奈ちゃんはパパさんを睨むと、自分の部屋へ走って行った。



……居づらい!

何このドヨンドヨンの空気。

梅雨かと思わせるぐらいに空気が重いよ…。
空はこんなに晴れているのに、ここだけ雷雨!


台風注意報発令すべきだ気象庁。



「入って」


そっけなく藤井先輩がそう言うと、私の腕を握ったままのパパさんは、革靴を脱いで私と一緒に部屋へ上がった。


ソファーに私とパパさんが座って、向かいあうように椅子を置いた先輩は、その椅子に座る。


「……で?何しに来たん?」



パパさんは、私の腕を掴んだまま。

パパさんの手は、少し震えていた。


「…そろそろこっちに戻って来ないか?」


「なんで」


「お前にはインテリアデザイナーは向いてない」


「は?」


「お前は大阪で、普通に就職して、結婚して、幸せに暮らせばいい」


「よく言うよ。親父。自分が家族壊しといて」





藤井先輩は、怒ってた。
でも、怒っていると言うより、泣いていたって感じ。


目の前の藤井先輩は凄く怒っているけれど、本当は悲しげな気持ちが伝わってくる。





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