CL




大きな、大きなキャンバスに生まれた、もうひとつの空のよう。
ただ、ただ真っ青なだけのそれ。
アキちゃんが、一体なにを考え、なにを思って、筆から滴る絵の具にも気づかずにキャンバスを青くしたのか。
わたしは、知りたかった。

「…んー、空、かな」

わたしの考え通りの答えを返したアキちゃんの声は、少しだけ、切なげだった。

「あ、やっぱり空なんだ」
「わかる?」
「うん。っていうか、これだけ青かったら、空かなって思うかも」
「それもそっか」

あははっ。
と、アキちゃんは声を上げて笑った。
ぎこちない笑みだった。
わたしはたまに、アキちゃんがわからなくなる。
そこに居るはずなのに、居ないような気がする。
手を伸ばしても、触れられないような感じがする。
まるで、青い空をたゆたう、雲、みたいな。






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