CL
ナオは知らなくてよろしい。あたしが実は早起きして髪の毛とか服装とか化粧とかものすごい頑張ってるのとか知らなくてよろしい。
ホントはナオと学校行くのがあたしにとって特別だから、早起きして遅れないようにしてるとか。
ナオが呼びに来てくれるのが嬉しくて、なんか自分が特別なんじゃないかなって思えるからどうしても待ってしまう。なんてこと、あんたは知らなくてよい。
玄関を出て通学路を歩く。
後ろからついてきていたナオも、足の長さか身長の差か、たぶんどっちもだろうけど、難なくあたしの隣に並んだ。
隣を歩くこの時間が好き。
下を見れば、あたしの足と、ナオの足が一緒にアスファルトの上を歩いていて、好き。
上を見れば、ちょこっとだけ眠そうに欠伸をかみ殺すナオが居て、好き。
見上げるあたしに気が付いて、「なん?」と首を傾げてあたしを見下ろすナオが、好き。
あたしもだいぶ、乙女なヤツだ。
いつから好きになったんだろうって、たまに思い出そうとするんだけど、どうにも思い出せない。
っていうか、たぶん理由とかないと思う。
小さい頃は恋愛の“好き”がわからなかったから、もちろんきょうだいみたいな感覚で好きだった。
でも中学に入って、ふとそのきょうだい感覚の“好き”に違和感ができて、一緒に学校へ行くこの時間が大切になって、隣に並ぶナオとの距離が近いことに心臓がうるさくなって、そこで初めて、あれ?って思った。
でもそれが恋だなんて思えなかったから、あたしはその当時ナオじゃない彼氏が居た。もちろんモテるナオにも彼女が居た。
あたしはそれが当然で、あたしとナオはまた違う次元で繋がってるんだって勝手に思ってた。