365日+1日、飾らない言葉をさがして。< 短編集 >
13、年下のくせに。
「 優奈、久しぶり! 」


私の知らない男が
私に声かけてきた。

一回振り返ってみたが、
知ってる顔がなかったので気のせいだなって、
また歩き出した。


「 優奈! 」


私のカバンを引っ張る人がいる。
怖くなって震えながら振り向いた。


「 久しぶりだな、優奈。
顔色悪いけど大丈夫か? 」


「 あなたのせいです!! 」

まわりにも聞こえるくらいの大きな声で叫んでしまったから、
この知らない男は
私の口を手で押さえて


「 優奈、声デカイよ。
オレ覚えてないの?
望蒼( のあ ) だよ。
望蒼! 」


全寮制の中学に入ったから、
あっ!望蒼がね。
だから三年ぶりに会った。
二つも年下のくせに!
ずっと私に意地悪していたくせに!
望蒼のくせに!
女の子みたいな名前のくせに!

背がめちゃくちゃ高くなっていて、
なんだか私の知らない男になっていた。


「 望蒼? 」


三年間で大人になっていた。
15才のくせに!
17才の私を見下ろしている。


「 優奈…
綺麗になったなぁ。
男でもいるのか? 」


その一言が
私の右手を動かした。
気がついたら望蒼の左頬に平手打ちをしていた。


「 サイテー! 」


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