365日+1日、飾らない言葉をさがして。< 短編集 >
几帳面で忘れ物なんてしないタイプの松戸くんが、


「 初富( はつとみ )数学の教科書貸して! 」


ホントはめちゃくちゃ嬉しいくせに、
嫌々な顔して渡した。


一時間後に戻ってきた教科書には
小さく

< 教科書ありがとう助かったよ。 >


大切に消さないでおこう。

また
「 初富、数学の教科書貸して! 」


「 その次、うち数学だから早く返してね。 」


渡したときに一瞬触れた手のあたたかさにドキッとしたんだ。


約束通りに戻ってきた教科書には、


< 手が冷たかったよ。風邪ひくなよ。心配だから。
それと…そろそろみつけてくれないかな? >


そろそろみつけてくれないかな?

私はその言葉に教科書の全てを開いて確認した。


もう授業が終わっているページから、
赤ペンで○をしている文字を1つ見つけた。

それから何個か見つかって…
繋げて読んでみた。


<け、い、が、だ、い、す、き。 >


私は教科書を抱きしめ喜んだ。


私は返事をしなきゃ!と青ペンで○をつけた。



この教科書が戻ってくる一時間後。

松戸くんとの恋の勉強がはじまるんだね。


初富圭衣 ( はつとみけい )
これから、恋の一年生になります。

松戸くん一緒に勉強していこうね。





end
< 78 / 96 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop