渋谷33番
「それじゃあ、僕はここで」
そう言うと吉沢は1歩、その場から後退した。

「本当にありがとうございました。たくさんの方たちに助けてもらいました」

 それ以上言うと涙がこぼれそうなのか、雪乃は軽く会釈をして向きを変えた。

 
 歩き出す歩幅を感じながら、すぐに人並みにまぎれてゆく。


 角を曲がるときに振り向くと、まだそこに吉沢は立っていた。


 軽く手を振る吉沢に、改めてお辞儀をする。


「終わったんだ・・・」
そうつぶやくと、雪乃はもう後ろを振り返らずに歩いてゆく・・・。






















< 193 / 204 >

この作品をシェア

pagetop