渋谷33番
 朝食は、夕食よりもさらに悲惨だった。

 小さい弁当箱には、冷えた白米・半分のちくわ、おしんこがスカスカに入っているだけで、他にはだし汁のように薄い味噌汁とお茶のみだった。

「口に合わへん?」
あいかわらず箸のすすまない雪乃を見て、和美が尋ねた。雪乃が答えるより先にキャシーが、
「ダッテ、コレ、オイシクナイヨ」
とふくれっつらで嘆いてみせた。

 日本人である雪乃にとって不味いものなら、キャシーにはなおさらだろう。見ると、キャシーはほとんど食べずに、ちくわを箸で転がしている。

「あんたらさー、ちゃんと食べんと死んでまうで。しっかり栄養はとらんと」

 和美は文字どおりガツガツと口につめこんで、お茶で流すような豪快な食べ方をしている。

 食事もひと段落したところで、雪乃が口を開いた。
「今日、検事さんに会うそうなんですが、きちんと話をしたほうがいいのでしょうか?」

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