渋谷33番

「主任」
そう吉沢に呼ばれて、植園はさらに眉をよせて顔をしかめた。

「主任って呼ぶな、って言ったでしょう。嫌いなのよ、その言葉」

「はい、すみません」
素直に吉沢が頭を下げた。

 7階のフロアには吉沢の他には清掃員がいるだけだった。他のメンツは出払っている。植園は机に座ったまま書類を見るともなくめくっていた。

 吉沢は植園の机にお茶を置きながら、
「考え事ですか?」
と尋ねた。

 バサッと書類を机に投げ置くと、植園は腕を組みながら吉沢を見た。
「どう思う、あの子。山本雪乃」

「やっぱりその事ですか。DNAの調査依頼が被疑者からくるなんて珍しいですものね」

 軽くうなずきながら煙草に火をつけると、深く息を吐き出した。
「たとえどんなに悪あがきをしようと、私は証拠を信じるわ」

「でも、もしDNAが松下野々香のであれば、あの封筒は逆の意味の証拠となりますよ」


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