あきれるくらい側にいて
 
ひどい嗚咽と共に支離滅裂に漏らしたあたしの話を、いつものように途中でツッコミを入れず、モモちゃんは最後まで聞いてくれた。

そして、言った。


「サクラ、今すぐ久米島へ飛びなさい!」


それから、ロトで当てたという札束をあたしの前に突き出した。


「沖縄だろうが世界の果てだろうが、とっとと追いかけて、その年下君に全部ぶちまけておいで!」


白い歯を見せてニカッと笑ったモモちゃん。その手を握る。


「モ、モモちゃん……せっかく当てたのに、さ、30万円もいいの?」


涙だか汗だか鼻水だかわかんないくらいグチャグチャに濡れたあたしの顔を、モモちゃんは笑いながら手の平で拭った。


「別にあげるなんて言ってないわよ!」


やっぱり……って思ったけど、でもうれしかった。


「アタシ、アンタのこと見直したわ。
高学歴、高収入だけが取柄の堅物野郎なんかじゃなくて、ちゃんと中身を知って人を好きなったってとこをね」

そう言った後で、あたしの頭を撫でながら

「行っておいでよ。後悔はしたくないでしょ?」

と微笑んだ。


うれしかった。

やっぱり頼りになるモモちゃんは、いっつもこうやってあたしの背中を押してくれるんだ。

 

 
< 170 / 200 >

この作品をシェア

pagetop