あきれるくらい側にいて

「やっと逢えたね?」


彼は言った。

耳もとで囁かれたその声は、初めて聞くものなのに。

それは、もう何年も探し続けやっと巡り会えたかのような、心を震わす愛しい響き。


「うん…」


短く答えてあたしは、素肌の胸に顔を埋めた。

そしたら彼が、あたしの肩を抱いて甘い瞳でのぞきこんできたの。


見つめられると一層胸は高鳴り。愛の言葉が零れ落ちそうになった、その時


「 ―― っ」


不意に奪われた、唇。

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