あきれるくらい側にいて
 
それからさらに一週間後、あたしは、新年度から配属替えを言い渡された部署へ初出社する朝を迎えていた。
 
 
「サクラさぁ~ん!」


転属先の事業部。
入り口のガラスドアの前に立った時、後ろから名前を呼ばれた。

それは、イントネーションにクセがある甘ったるい女の子の声。


「お久しぶりです!」


振り返ったあたしの目の前に立っていたのは、派遣社員の山田 鈴(ヤマダ・リン)、年齢は確か23歳。


「リンちゃんじゃない。どうしたの?」


嫌な予感がするのを抑えつつ訊ると、彼女は満面の笑みを浮かべてこう言った。


「今日からまたこの会社で働くことになったんです。お世話になりますね、サクラさん!」

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