KYOSUKE


テーブルの上の灰皿には、吸殻がたくさんあった。


俺が来るまで戒さんが吸ったものだろう。


彼がタバコを覚えたのは中学二年生のとき。以来、鈴音姐さんやおやっさんに隠れて吸っている。


俺もその口だったから、彼を咎めることができない。


咎めるつもりもないし。


「昨日は兄貴たちがお前ンとこ行ったみたいやな」


戒さんもタバコに火を点けて、窓の外をぼんやりと見た。


大通りに面したこの場所で、道路を横行している車は意外にも少なくない。


どうしたんだろう。


戒さんの横顔がどこか疲れを滲ませている。


よっぽど争奪戦が壮絶だったのか…


いや…そんなことで一々疲れを覚える人じゃない。


むしろ喧嘩を楽しむ人だ。


俺は出されたお冷に一口口を付けた。気持ちを落ち着かせるために。


「カラオケ。オールさせられましたよ。何であの人たちあんなに元気なんですかね?」


「あいつらは化け物やさかい、気にしんとき」


戒さんはケケケと白い歯を見せて笑う。


いつも通り笑ってるつもりだろうけど、俺には無理してるように思えた。


「戒さん……何かありました?」


俺の人差し指と中指で挟んだタバコの先から煙が天井へ昇っている。


戒さんのも同じ。


灰色の煙の合間に見えた戒さんの顔には




表情がなかった。






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