KYOSUKE


「みんな薄情でよぉ。あたしが買い物付き合ってって言うと、逃げてくんだ」


スーパーまでの道を歩きながら、お嬢はぶつぶつ文句を言っている。


そう言えば龍崎家を出るときに、マサさんを初めとする組の人たちが俺を哀れむかのように目で見送っていたっけ。


買い物だけでしょ?


何がそんなに大変なのか……





それにお嬢と二人きりで出かけるのなんてこれが初めてじゃないか。


デート……って言うにはあまりに色気がないけど、


それでも二人きりなのは変わりない。


初めて二人きり……


ドキドキし過ぎてどうにかなりそうだ。





―――と思っていたが、俺が甘かった。


スーパーにたどり着いて俺は唖然とした。


組の人たちが逃げ出したくなる気持ちが分かる。


目玉商品のお肉コーナーには主婦たちが群がり、特売品の精肉を奪い合ってる様は


まるで戦争そのものだった。


「よし!行くぞっ!!キョウスケ。出遅れンなよ」


お嬢はそう腕まくりをして意気込むと、その主婦の塊の中に飛び込んでいった。


呆然とその姿を見守っていたが、


「お前も来るんだよ!」とシャツの襟をつかまれ、俺はその塊の中に引っ張り込まれた。


特売品に群がる主婦のなんと恐ろしいこと。なんてサバイバル!!!


「ちょっとあんた邪魔よ!」

「どきなさい!」

「この肉は私が先にとったのよ!」



主婦たちの怒号が飛び交う中、


俺は彼女たちにもみくちゃにされながら、何とかお嬢の手助けを―――






できたかな……




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