KYOSUKE



その瞬間、歩道橋の下の方から女の叫び声が聞こえた。


驚いて俺とお嬢はほぼ同じタイミングで歩道橋の下を覗きこんだ。


「ひ、ひったくりよーーー!!」


一人の主婦が叫んで、道路を指差している。


その脇におばあさんが一人倒れこんでいた。


瞬時に道路に視線を移すと、渋滞している車の間を縫って、まさに今一台の原付が走り出そうとしている。


真昼間なので、歩道側は道行く人でかなりの騒ぎだ。


「キョウスケ!これを頼む!!」


お嬢は俺に買い物袋を押し付けると、手摺りに手をついた。


「え!お嬢っ!?」


と聞く間もなく、お嬢は手摺りから身を乗り出しひらりと歩道橋の向こう側へ身を翻した。


「何するっ……!」


俺の問いかけも虚しく、お嬢の体が手摺りの向こう側に消えた。



一瞬―――



その姿が、天を猛々しく舞う



龍そのものに見えたんだ。




彼女の体が太陽の光を受けて





黄金に輝く







龍に見えた。








――――!!!





びっくりして、だけど慌てて俺は手摺りに手をつき、お嬢の安否を確認するため下を覗きこんだ。


お嬢はすぐ下でゆるゆると徐行運転をしているトラックの荷台に、膝をついて降り立っていた。



―――何という反射神経。




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