KYOSUKE


「キョウスケ!大丈夫だったか!?」


お嬢は俺に走り寄ってくると、真剣なまなざしで無遠慮に俺の体のあちこちを触った。


ケガをしてるかどうかを確かめたかったらしいけど…そう触られると……


コホン


俺はわざとらしく咳をして、お嬢を引き剥がした。


「ご心配をおかけしてすみません」


「いや、こっちこそ。変なことに巻き込んでごめん」


お嬢はこっちが心配になるぐらい、眉を寄せ顔色を曇らせて俺を見上げている。


お嬢は―――俺のことを本当に心配してくれたみたいだ。


それと同時に、この様子じゃ俺の本性がバレてないようで、幾分かほっとしたわけだけど。


遠くでパトカーのサイレンが聞こえる。


お嬢の話だと、どうやらおばあさんに付き添っていた主婦が通報してくれたようだ。


パトカー…極道の倅なんかやってると、どうしても苦手なんだよね。


サイレンの音が近づいてきて、一台の覆面パトカーが滑り込んできた。


「おっちゃん!こっちこっち!!」


お嬢はそのパトカーに向かって手を振っている。


「おぅ!朔羅っ!無事か!?」


と、中からどっちが極道か分かったもんじゃないほど人相の悪い中年の男が顔を出した。


「あのおっちゃんさ、顔はあんなだけど、すっげぇいいおやっさんなんだ。あたしの幼馴染の親父でさ。ああ見えて警視庁のマル暴なんだぜ?」


と説明をくれる。


マル暴…なるほど、だからあんな極悪顔してるんだ。


俺は犯人の一人の胸座を掴んで、そっと耳打ちした。




「おらっ、お迎えが来たぜ。昼間っからひったくりなんてしぃへんで、まともになりい」




幾分かドスを聞かせて、睨み上げるとひったくり犯は縮み上がった。




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