KYOSUKE
その質問は河野さんにとって至極難問だったらしく、ちょっと眉根を寄せると彼女は首を傾けて腕を組んだ。
「うーん…どうなんだろ」
ちょっと悩んだ挙句、河野さんは顔を上げて少しだけ微笑んだ。
「極道じゃなかったら付き合ってたとは思う…って、鷹雄くんの気持ちは分かんないけど。だけど
結婚はないな」
けっこん―――??
胡坐をかいていた俺の膝がぴくりと動いた。
また一気に飛ぶなぁ。
でも
「結婚はない、ってことは、俺のことそこまで好きやないってことやん。それとも俺はかいしょなし(甲斐性なしのこと)に見えるん?」
そうかもしれへんけど、と付け加えて俺は苦笑を漏らした。
俺の言葉に河野さんは薄く笑って身を乗り出す。
カーディガンを脱いで、半袖の薄いブラウス一枚だった。深く襟ぐりの空いた胸元からその向こうの白い肌がちらりと見えて、俺は目をそらした。
「逆だよ。本当に好きな人とは結婚したくない」
なんで…?
と俺が視線を戻すと、今度は彼女の方が顔を背けた。
「うちの両親、大恋愛の末の結婚だったの。だけど、父親の不倫で―――あっけなく離婚。あんなに愛し合ってた気持ちって何だったんだろう。そんな簡単に壊れちゃうんだ…って
だからあたしは好きな人とは結婚したくない」
河野さんの言葉はグラスの中のお茶のように冷たくて、刃物の先のように尖っていた。
俺は彼女のこんな声を聞いたことがない。