KYOSUKE


俺はお嬢をベッドに横たえると、その体の上にそっと羽毛布団を掛けた。


お嬢が指先をちょっと出して、何かを欲しがるように動かす。


なんだろう……


キョロキョロ見渡して、近くにあるうさぎのぬいぐるみを近づけてみると、お嬢は納得したようにぎゅっとぬいぐるみを抱きしめ、幸せそうにちょっと口元に笑みを浮かべた。


「はぁー」


盛大にため息を吐き、俺はベッドの下に力なく座り込んだ。


そして改めて口元を押さえると、今になってようやく事実を飲み込むことができた。





お嬢とキス―――






してしまった。


ドキドキと煩い心臓を、「はじめてでもあるまいし」、「第一お嬢は酔ってるんだ」と必死に言い聞かせ、


それでも心臓の音は収まるどころか、俺の中で暴れ狂っている。



それでもバカみたいにドキドキしてるのは俺だけで……


何も知らないお嬢はすやすやと心地よさそうに寝息を立てている。


人形のように大人しく眠るお嬢の可愛い寝顔を見つめて―――


俺はちょっとだけ頬を緩めた。


幸せそうな顔をして、一体どんな夢を見てるんだろう眺めていたとき、




「キョウスケ…」



お嬢の口が僅かに開いて、俺を呼んだ。






< 225 / 257 >

この作品をシェア

pagetop