それでも君が。
「ねぇ羽月、これ蒼ちゃんのじゃなかったっけ?」
「え?」
「リビングのテーブルの上にあったんだけど」
「……あ」
お母さんが手に持っていたのは、確かに私が蒼君にプレゼントしたリストバンドだった。
真っ青な。
「忘れてたぁ……。ちょっとほつれてる所があってさ。直しとくって言って、預かってたの」
「そう……。お母さんが直しとこうか?」
「ううん! 私が直したいから」
「そう」
ニコリと笑ったお母さんは、一旦部屋から出ていき、また戻ってきた。
その手には、裁縫箱。
私に「はい」と渡す。
「ありがと」
笑ってそう言うと、お母さんは私からマグカップを受け取り、それをテーブルに置いた。
針と青い糸を取り出し、小さな針穴に糸を通す。