少女の始まりと残酷な終焉。
◆自称“普通”な一日の幕開け

いつもたくさんの学生で賑わっている通学路には、見事に誰もいなかった。
ここ数年、遅刻をした事が無い私の胸は焦りでいっぱいだった。
焦りと走りによる負担で私の心臓はバクバクと波打ち、あろうことか飛び出しそうな勢いだった。
しかも初夏とはいえ、今日はかなり暑い。
汗かきでない私でさえも汗を流し、顔に流れる度に左手のタオルで拭う。
息も切れ、はぁはぁと坂道を駆け上がったような息遣いになる。
こんなに暑いなら水筒でも持ってくるべきだった、と今更ながら後悔した。
商店街を駆け抜け、冷房のガンガン効いたスーパーを抜けると、一気に田舎らしい雰囲気の場所へ出た。
目の前に田んぼが広がり、右側に小さな家が3軒ほど、左側には竹林が広がる。
その竹林をの中の道を5分ぐらいかけて抜ければ、ようやく校舎が見えてくる。
竹は道を太陽の光から守るように生えていて、脇には小川が流れている。
小川の流れる音、竹のさわさわと揺れる音…
そんな涼しげな道に入り、ようやく私は走る足をゆっくりと減速させていった。


竹林道を抜け、目の前に校舎が見えた頃、かすかにチャイムのの音が聞こえた。
登校完了時刻のチャイムかと、私は慌てて腕時計を確認する。
が、時計の針はようやく8時を指したところだった。

「あれ…?」

何のチャイムだろう、と疑問を抱き、もしかしたら自分の時計の時間がおかしいのかも、と軽く考える。
また走る足を加速させている間に、そんな疑問と考えもすっかり忘れてしまったが。



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