ももいろ

【逃避】


何にショックを受けたらいい?

何を考えたらいい?

何を反省したらいい?

誰かを責めたら楽になれる?



なれるわけないよね。



バカだあたし。



どこをどう歩いたのか、繁華街に来ていた。

平日の遅い時間なのに、結構人がいる。

「こんばんはー。仕事帰り?」

振り向くと、普通の会社勤めでは怒られそうな派手な髪型をした若い男がいた。

色抜きすぎ…退色してるじゃん。

髪、痛んでますね…

その髪型にすれば、みんなそれなりにかっこよく見えますよね…

あたしはどうでもいいことばかり考えた。

「どうしたの?元気ないじゃん!一緒に飲んで元気にならない!?」

男は、イラつくような笑いを顔に貼りつけ、変に慣れた口調で続けた。

「うちの店は格好いい奴多いからおいでよ!俺が一番だけどね、あっはははは」

「…」

ホスト?

「ね、一緒に楽しくなろ!」

楽しく…なれるわけないじゃん。

あなたは何がそんなに楽しいの…?

一人で騒がしくしているホストらしき男をぼんやり眺めていたら、

「桃花ちゃん!?」

聞き覚えのある声がした。

あたしと男が、声のした方を見ると。

「浅…田さん」

浅田さんだ。

そうかぁ、浅田さんのお店はこのへんなのかな?

浅田さん…

浅田さんは高いヒールのパンプスをはいているのに、器用にこっちに走ってくる。

「まあ!あなた、この子に何したの!?」

浅田さんは男を叱り付けた。

「え!?」

男は改めてあたしの顔を見ると、

「お、俺知りません!じゃあ」

慌てて去っていった。

…なんなわけ?

浅田さんはあたしの顔を覗き込んだ。

「どうしたの桃花ちゃん、そんなに泣いて。今の男に何かされたの?」

泣いて?

あたし?

「どうしたの?」

そう言いながら浅田さんは、ハンカチであたしの顔を拭いてくれた。

「…っく」

「あら、あら、桃花ちゃん」

浅田さんはあたしの頭を撫でて、手をひいてお店まで連れていってくれた。

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