ももいろ
「俺は確かに優しくしない」
お互い目をそらしたまま、司くんは半分独り言みたいなかんじでブツブツ言い始めた。
「向こうだって、別に俺じゃなくてもいいのは知ってる。俺は女の子達のやれるかやれないかの遊びに乗っかってただけ」
司くんは洗面器から氷を一つつまんで、にぎったり離したりしている。
「いい思いする代わりに、好き勝手言われるんだよこっちは。優しくしようにも、あいつら新しいターゲットできたらさっさとそっちいくし」
…そんなもんなの?
俺は必要以上に関わりたくないから優しくしたことないけど、と小声で言ったのを、あたしは聞き逃さなかった。
「確かにいいことじゃないけど、なーんにもわかってないサツキさんに最低とか言われたくない」
言葉が切られたから司くんを見たら、司くんは真剣にあたしを見ていた。
「それに、もうシナイって言ってんの」
「…」
「女の子は好きな男とするのがいいって、最近思うから。俺が大事に思ってる人だけじゃなくて、みんなそうなったらいいなって、今日思ったから。だから俺、もうそういうのシナイ」
大事に思ってる人…好きな人のことだね。
「…そう」
「そう。俺は一つ大人になった」
司くんはなぜかちょっと誇らしげにしている。
大人ねぇ…。
あたしは気になっていたことを思い切って聞いてみた。
「避妊はしてるの?」
司くんは顔を真っ赤にして、
「んなっ…ハァ!?」
大声を出したけど、あたしの真剣な顔に気付いて、答えてくれた。
「あたりまえじゃん!女の子に対する礼儀でしょ?ちゃんとつけてました!」
「生のが気持ちいいとか…中出しさせてよとか…」
司くんは目を白黒させている。
「サ、サツキさん!な、何言ってんの!?AV見過ぎじゃないの!?そんなこと言う奴、いるの!?アホ?」
…よかった。
司くんは店長とは、違うのかも。
少なくとも、そういうところは。
そして、好きな人を大事に思うから、他の女の子のことも考えられるようになったんだね。
安心したような…
羨ましいような…
複雑な気分。