ももいろ

【プレジャー・1】


「こんちはー…うぉ!司!?」

今日は俺がバイトしてる居酒屋で、開店前に打ち合わせ。

谷川が俺の頭を見るなり大声を出した。

「やあ、谷川くん」

俺は少し胸を張って

「まあ、座りたまえ」

カウンターの椅子を勧めた。

「おまえ、頭」

「ふふん」

いいでしょ!



あの後、サツキさんは一睡もしないでどうしようか考えてくれたらしい。

流行りがどんなのかわからないからって、コンビニに行って雑誌とかいっぱい見てきたんだって。

「ダメだよ!夜中にひとりで出歩いたら!どーして俺を起こさなかったのさ!?」

「悪いと思って…ごめんなさい」

「あ、…うん」

なんだか素直なサツキさんが、ちょっと新鮮だった。

「あの、これからはね、危ないからね?一緒にいこうね?」

サツキさんはフフッと笑って、

「うん。ありがとう」

と言った。

…。

素直って素敵。

俺は感動したよ?

もう今すぐ一緒にコンビニ行きたいくらいだよ?昼だけど。

時間なんて関係なしに、サツキさんがどっか行くならどこでも一緒に行きたいくらいだよ?

素直なサツキさんは可愛いなあ。

サツキさんは俺を見た。

「司くん。何ニヤニヤしてるの?」



「ニヤニヤ…してる?」

「してる。不気味」

…不気味って。

この人。

人がいい気分だったのに。

台無し。

「で、髪型なんだけど」

「あ、うん」

サツキさんは真剣な顔でいろいろ説明しはじめたけど、俺は、

サツキさんが美容師さんって、いいよなあ。

なんてボンヤリ考えていた。

「…司くん。聞いてるの」

「あんまり。イテーッ!」

ほっぺたを思いっきりつねられた。

「もう!人が真剣なのに!」

あ、怒っちゃった。

「ごめん…サツキさん、さすが美容師さんだなーって感心してたんだよ」

「そんなのはいいから!で、どーすんの?」


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