ももいろ

「クックックック…」

オーナーは急に笑い出した。

なんなの?

俺、真剣に怒ってるんだけど。

「いや、ごめん、司ごめん」

そんな涙目になるほど笑ってなんなの?

「いやあ、司がそんなに喋るの初めて聞いたわ」

オーナーはおしぼりで目元を拭いながら続けた。

「サツキちゃんがそういうつもりじゃないのは、わかってるんだけど。ククッ。司が彼女を利用しようとしたら、それこそ野宿させようと思ってたんだけど、いやいや、安心した。ククッ」

…。

「彼女のことだから、仕事のことはすぐ言うと思ってた。うん。いや、いや、それにしても」

オーナー、いや、って何回言うつもりだろ。

「司にズレてるって言われるサツキちゃん、すげーな…あっははははははは!」

オーナーはついに爆笑した。

…俺、試されたわけ?

谷川が口を尖らせた。

「あーあ、いいなあ、サツキちゃんと同棲。俺が宿無しになればよかった」

「同棲じゃない。同居」

俺は即座に訂正した。

もう。口を尖らせたいのはこっちなんだけど。

「大体、谷川、家事全然ダメじゃん」

おまえだったら本当にヒモになりそうだな。

「家事?」

オーナーと谷川が不思議そうに俺を見た。

「そう。お金…受け取ってくれなかったから」

「ああ、受け取らないだろうなあ…ていうか家事?すんの?おまえ」

オーナー…また笑いそうだな。

「そう。家政夫として労働します俺」

「ぶわっはははははははは!」

やっぱり。

谷川は神妙な顔つきで俺に言った。

「おまえキッチリしすぎてるとこあるからな…やると決めたらやるんだろうけど。バンドとバイトと家政夫と。体壊さないようにしてくれよ」

お?たまにはリーダーらしいこと言うね?

俺はちょっと見直…

「あーあ、俺も家事できたらよかったのにな。サツキちゃんなら見てるだけでもいいや」

…さなかった。
< 23 / 139 >

この作品をシェア

pagetop