ももいろ

【カミナリボーイ・2】

七月。

なんとなくじめじめした天気が最近続いている。

梅雨明け宣言なしで、八月になるんだろうか?

あたしの気分は天気で左右される。

今日は雨。

だからあたしも雨。

仕事から帰ってくるときに、ジーンズの裾が濡れた。

それだけで憂鬱になる、ただでさえ仕事帰りは憂鬱なのに。

今の時期は、ボーナスが入って奮発する人が多いから、店が忙しくなる。

指名が多いからと言ってあまりわがままばかりも言えず、この時期だけは店に頼まれて出勤を少し増やしている。

「くっそう…最低」

あたしは服を脱ぎ捨てて、シャワーを思いっきり浴びた。

髪にローションがついてパリパリになっていたのを、力任せにシャンプーした。

遊び慣れてない客は嫌いだ。

乱暴で無神経であつかましい。

「エッチなことしてお金もらえていいね」

「気持ちいいこと仕事にできていいね」

なんて、この仕事をしてる以上、耳にたこができるほど言われてきた。

頭悪いんじゃないのかと思いながらも、うまいことかわすのは慣れている。

顧客になりそうな人には、根っからの淫乱女だと思わせるような返事をしてその気にさせたりもする。

だけど、基本、風俗嬢にそんなこと言う奴は馬鹿だ。

それに加え、今日の客は

「いくら稼いでるの?」

「道具持ってきたんだけど使っていい?」

なんて言ってきた。

ねえ、初対面の人間に年収聞かれたらどう思う?

道具?いいわけない、あたしはそういうサービスまでしてない。

バカか!思いながら、やんわりかわした。

ベッドでのプレイも、こうすれば女は気持ちいいんだと決めつけてなんとも自己中心的で、乱暴。

痛い!

下手くそ!

なんて、言えません。仕事だから。

逆に、仕事だから、自分の体が傷つかないようにうまいこと守らないといけない。

ところが、何を言ってもダメな人はダメだ。

かなりダメージを食らったけど、今日はこの人が最後だし、もう少しの我慢!

そう思いながら風呂場でマットプレイをしている時、さらに最悪な気持ちにさせられた。
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