ももいろ

【ホスト・2】


カーテンから差し込む日差しが眩しくて、あたしは目を覚ましたが、

「ウッ…気持ち悪い…」

またシーツにくるまった。

ちょっと飲み過ぎたな…

時計に目をやると10時30分。

3時間しか寝てない。

今日は仕事休みだっけ…

喉が渇いたから、水を飲もうとベッドを降りようとした。

「…!?」

足に感じたのは、フローリングの堅い感触ではなかった。

「痛い…」

「つ、司くん!?」

あたしは床に転がっている司くんの横っ腹を踏んづけていた。

司くんはあたしの部屋に、枕とタオルケットを持ち込んで寝ていたようで、寝ぼけ眼であたしを一瞥した後、タオルケットにくるまってしまった。

な、な、な、なんで!?

あたしは記憶を辿った。

昨日はホストクラブに行って…

さんざん飲んで、担当ホストに絡んで…

ふらふらで歩けなくなったから、タクシーでマンションの前まで送ってもらって…

そうだ、司くんと鉢合わせしたんだった。



ちょっと…



あたしは完璧に思い出して、赤面した。

酔ったからと言って、誰かさんみたいに記憶が飛ぶことはめったにない。

覚えてる、うん、ばっちり覚えてる。

司くんに絡もうとしたけど、とんちんかんな返事ばかりするから、イライラした。

司くん、すごく困った顔をしていたな…。

それで、あたし、司くんに一緒にいてって言っちゃったっけ。

うわあ、恥ずかしい。

だから司くんは、言葉通り一緒にいてくれたんだろう。

クリーム色の芋虫みたいになってもぞもぞしている司くんを見て、笑ってしまった。


今、この瞬間、一緒にいてっていう意味じゃなかったんだけどな…


あたしは芋虫を優しくとんとんと叩いた。

「今日のご予定は?」

「…16時から…打ち合わせ…」

そっか、じゃあまだ寝てても大丈夫なんだ。

堅い床で寝て、腰とか背中とか痛くなると可哀想だから、あたしは司くんにベッドに行くように促した。

「いい…」

芋虫はイヤイヤしている。

< 46 / 139 >

この作品をシェア

pagetop