ももいろ

楽屋。

セッティング等準備を済ませ、後は開演時間を待つばかり。

はぁ…。

「どーした司?さっきからため息ばっか」

谷川が俺の顔を覗き込んできた。

「鈍感なおまえでも、さすがに緊張しまくり?」

鈍感って。

「緊張してる…はぁ」

ふぅ〜、はぁ…。

太田が可笑しそうに言った。

「ため息だか深呼吸だかわかんないな」

「はぁ…うん」

谷川は太田と顔を見合わせた後、また俺の顔を覗き込む。

…そんなに見るなよ、穴開いちゃう俺。

「司、まさか、悩み事?」

まさかって。

「悩み事か…はぁ」

谷川は心なしか目をキラキラさせながら、

「なんだ?どーした?大事なワンマンだぞ!すっきりして挑もうぜ!」

と俺の肩をバシバシ叩いた。

うーん。

「サツキさんが…」

谷川がすごい勢いで食い付いてきた。

「おお!サツキちゃんか!なんだなんだ」

太田も、

「ああ、噂の。で、どーした司」

なんか…嬉しそう?

まぁ、いいか。

「俺はなにもしてあげられないなと思って」

興味深々と顔にハッキリ書いてある二人に向かって、俺は思ってることをぽつぽつ伝えた。



サツキさん最近おかしい。

あの人はもともとおかしいんだけど、なんていうのか…


特に不安定なかんじっていうのか…


少しは俺に、心を許してくれたのかなと思っていたけど、

何考えてんのかさっぱりわかんない時もあるし。

今日だって急に…

泣くし。

俺、そんなにサツキさんがつらいことあったとか…

わかんなかったし。



元気づけたいけど、俺、サツキさんのこと、好きな食べ物しか把握してないし。

ホスト行って発散したいんだろうけど、俺は行って欲しくないし。

サツキさんが、俺が帰るの待ってるって言ってくれて、うっかり喜んじゃったけど、

そこまで口出ししていいのかな?俺。

サツキさんはサツキさんなりにストレス発散したいだろうに。

「なんだよ司。そんなことかぁ」

「そんなことってなんだよ谷川」

「ライブに呼べばいーじゃん。ストレス解消ならライブだろ!」

< 64 / 139 >

この作品をシェア

pagetop