ももいろ

【デリバリーホスト・1】


「ぅお疲れっしたー!!」

谷川が音頭を取って、乾杯。

初ワンマン、大成功!

俺、嬉しいよ。

バイト先でいつものようにやる打ち上げだけど、今日は特別に嬉しいなぁ。

本当嬉しいなぁ。

俺はニコニコとビールをいただいていた。



「お疲れさん!ライブよかったぞ司」

「あ!オーナー!見にきてくださって…ありがとうございます」

オーナーは感慨深げに俺を見た。

「おまえら、もう俺んとこのハコじゃキャパ少ねぇレベルになったなぁ。育ったなぁ」

「オーナー…」

俺ら、オーナーにはすごくお世話になってる。

プライベートなことから、バンドの運営まで、いろいろ。

CD出すときも、レーベルに口きいてくれたし、スタジオだって初ライブだって…


「オーイ!泣くなよ司」

オーナーは苦笑して俺の頭を撫でた。

「なんだ?もう酔っ払ってんのか?ダメだぞ、今日は深酒すんなよ」

「わかってますよー泣いてないし酔ってないですよ」

そう、今日は酔っちゃダメ。

明日、夕方からレコード会社の人と面談。

オーナーの大学時代の友達で、今はメジャーレーベルにいる人。

この前谷川と喧嘩になったけど、よくよく聞いたら。

仲間うちでインディーズレーベル立ち上げるから、俺らに興味持ったって。

オーナーも一枚噛むらしい。

そういう大事な話するから、今日の打ち上げは短時間で控えめにやる予定。

だから、サツキさんに待っててなんて言えたんだよ。

酔っ払ったら何時になるかわかんないもん。

「ところで、サツキちゃんはいないのか?打ち上げ」

ん?

「打ち上げってか…サツキさん、あれ以来ライブすら来たことないですよ?」

オーナーは首をかしげた。

「そうなのか?さっき似た女の子見たんだけど、雰囲気違ったから、自信なくて声かけなかったんだけど」

俺は断言した。

「人違いですよ。あの人、音楽に興味ないですもん」

「なんだ、そうなのかぁ」

オーナーは残念そうにしている。

好みとかあるし仕方ない。

うん。
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