ももいろ

【ヒモ・2】


今まで出ていた4つのバンドは、

Tシャツにジーンズというラフな感じの服装で、

親しみやすいポップな音楽だった。

がんばってるんだなあ、と見ている方が微笑ましくなるような感じ。

最後の…このバンドは、

細身の黒いスーツにネクタイといういでたちで、

チャラいホストみたい…と一瞬思った。


でも。


彼らの演奏が始まってあたしは一気に引き込まれた。

荒く激しい音の波に驚いて唖然としているところに、

丸くて艶のあるボーカルが乗る。

伸びる声、ちょっと語尾に癖のある歌い方。

あたしはドリンクを飲むのを忘れて、聴き入ってしまった。




「サツキちゃん、どうだった?ちょっとは楽しめた?」

ライブが終わった後、鶴田さんがやってきた。

「うん、おかげさまで。ありがとう」

あたしは少し興奮していた。

音楽を聴いて楽しいと思ったのは初めてだったから。

「よかった。そうそう、気に入ったバンドあった?よかったら物販で何か買ってやってよ」

鶴田さんはちょっといたずらっぽく笑った。

「ぶっぱん?」

「そう、あそこ、ほら、さっき出てた奴らが手売りしてるんだよCDとかグッズをさ」

鶴田さんの視線の先には、

出演していたバンドの子達がCDやTシャツを売っている一角があった。

全然気がつかなかった…。

「へえ。見に行ってみようかな。鶴田さんに営業されたことだし」

「はい!売上アップにご協力お願いしますサツキお嬢様!」

笑いながら話していたら、

「アンケートお願いしまーす」

と後ろから声をかけられた。

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