ももいろ
【秘密】
あれ以来、店長とあたしはお店では変わらず接しているけれど、
度々エッチするようになった。
お店が終わってから、離れたレストランで待ち合わせをして食事。
その後、店長に車で送ってもらう。
そして、車の中で。
それだけの関係。
でもあたしは、幸せだった。
店長は意外と子供っぽいところもあって、仕事中でも、誰からも見えないところでお尻を軽く触って来たりする。
「わっ!」
あたしが驚くと、店長はクスリと笑って何事もなかったように仕事に戻る。
「もうっ」
ちょっとふくれてみるけど、そんな少しのイタズラも嬉しい。
彼女が居るのはわかってる。
でも、あたしだって店長が好き。
好きな人に触れてもらいたいと思うのは、自然なことでしょ?
4月に入り、会員様に向けて割引イベントをすることになった。
はがきやメールでお知らせもするけど、店内にポップを貼ったりするのはあたしたち若手の仕事。
今日、閉店後、早紀と一緒にやろうと思っていたけど、
早紀がすごく体調悪そうだったから、あたし一人でやることにした。
「ごめんね、桃」
早紀が白い顔をして言った。
最近、なんだか元気がないことが多い。
「ううん、いいの。それより、早く体調治してね」
「うん…あのね、桃、今度相談したいことが」
「ん?」
入金から帰って来た店長が早紀に声をかけた。
「ああ、早紀。早く帰って早く寝ろよ。桃ちゃんは俺が手伝うから、心配するな」
「店長…」
早紀はもの言いたげだったけど、店長がすごく優しい顔で、
「な」
と早紀の頭を撫でたら、
「はい」
とうなずいて、ごめんね桃、と言ってお店を出て行った。
店長、優しいけど、ちょっとヤキモチやけちゃったなあ。
それにしても、早紀、相談ってなんだろう?
「どうした?ぼんやりして」
「早紀、大丈夫かなと思って。最近、食欲もないみたいで、お昼もあんまり食べてないし」