オトナな初恋

疑惑の香り

それから少しして、電話が鳴った。

『悪い。少し遅くなったけど、今から行くから。
家にいる?』


「いま外に出てて、街中にいるんです。」

『俺も街にいるから、ちょうど良かった。どの辺り?
すぐ向かうよ。』


場所を告げて、待つ。


街にいたって…やっぱりさっきの、拓海さんだったの?

信じるなんて大きなこと、関口主任に、言ったくせに、疑ってしまう、自分がいて嫌になる。


クラクションが小さくなり見ると、関口主任の車が止まってた。

駆け寄り乗り込む。

『お待たせ。どっか飯でも食いにいくか。腹減ってる?』

「まだそんなにはすいてないです。」

『じゃあ、1回家によって着替えてきてもいい?』

「はい。構いませんよ?」

拓海さんは、Yシャツにスーツのズボン姿だった。

「あれ?上着は?」

『ちょっと外、出歩いてたら汗かいて…今日暑かったろ?
そろそろ本格的な夏到来だな。』

「ですね。私も制服のシャツ、長袖だとそろそろ暑いなって思ってました。」

『今の部屋、元は会議室だったところだし、小さな部屋だから、大部屋よりは、涼しいほうだと思う。もう少ししたら、快適に仕事できるよ。』

「そうですね。」

すぐに早坂主任の家へついた。

『ちょっと待ってて。すぐ着替えてくる。』

そう言って車を降りて行った。



普通に話せてるよね?変な態度とか取ったりしてないよね?

本当は昨日の事、さっきの事、気になって仕方がない。


ふと後ろを見ると、スーツの上着が置いてあった。

急いでたから、持って行くの忘れたのかな?

乱雑におかれた上着。

しわになっちゃうと思って手に取り、たたもうとした。







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