【キセコン】とある殺し屋の一日
「うにゃあ。エンフィールドまで、届かなかったわぁ」

与一の前に回り、帯の辺りをぽんぽんと叩く。
与一は少し乱れた着物の合わせを直しながら、胡乱な目で藍を見た。

「さ、じゃあよいっちゃん。射撃の練習よ」

そう言うが早いか、えい、と桜の大木に蹴りを食らわす。
はらはらと、花びらが降ってきた。

「花びらを二枚、確実に撃ち抜きなさい。地に触れる前にね」

「連射ですか・・・・・・」

懐からエンフィールドを出し、降り注ぐ桜を睨む。

「よいっちゃんのは、ダブルアクションでやれば、連射も可能でしょ。それにしても・・・・・・」

エンフィールドを構える与一を眺めつつ、藍が、一旦言葉を切った。

「桜の下で銃を構えるよいっちゃん・・・・・・。うふふ、絵になるわぁ」

がくっと与一の気が抜ける。
再び胡乱な目になって振り向いた与一に、藍はぶんぶんと頭を振った。

「ああん! 駄目じゃない~っ! ほらっちゃんと構えて! 花びら散っちゃうわよ!!」

花びらが散る前に、己の気が散ってしょうがない、と思いつつ、与一は再びエンフィールドを構えた。
ひらひらと舞う花びらを睨み、狙うべき的を見つける。

引き金にかかった指に、力が入る---
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