【キセコン】とある殺し屋の一日
「女郎はそれが仕事です。っていうか、俺の布団って、状況が違うでしょうが」

「お家とお店の違いだけじゃないっ。大体、あたしは男に引っ付いてるわけじゃないわよ! よいっちゃんに引っ付いてるの! よいっちゃん以外の男なんかに、引っ付くわけないでしょっ!!」

えらい違いだ、と思うが、口には出さない。
また朝の話題をぶり返すのも、面倒だ。

「わかりましたから、大人しくしてくれませんかね。背中で暴れられる身にも、なってください」

心底うんざりしたように言っても、藍は意に介さない。
相変わらずぶらぶらと足を揺らしながら、きょときょとと周りを見ている。

「あっ! 折角だから、お参りしていきましょうよっ! 流鏑馬も見られるかもっ!」

「神仏信仰なんて、ないくせに」

ばこん、と藍の足が、与一の太股を蹴る。

「そんなの、いいのよっ! あたしたち自身のことじゃないわよ。今まで手にかけた人たちの供養をお願いしますってね」

これにはなるほど、と与一も納得する。
殺し屋である自分たちが己のことを願うのは、おこがましいというもの。

「そういうことも、考えられるんですねぇ」

思考はいつも常人離れしているが、普通の感覚も持ち合わせているようだ。

が。
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