一目惚れ【短編】

「うわっ!マジで??俺なんかを気にしてくれる子が居るなんて、なんか嬉しいなぁ〜」

「えっ?引いたりしないんですか?」


私は、目を見開きながら遊君を見た。


「引かないよーってか、むしろ嬉しいかも。それに、今日落ち込む事が有ったから、余計かな」

遊君は、窓の方に視線を反らす。

私もついつられて、遊君が見ている方を見てしまう。

辺りは暗くなってきて、サラリーマンやOLさんが足早に駅に向かっていた。


「……フられちゃったんだ」


雑踏に消え入りそうな声で話す遊君。

かろうじて聞こえたその言葉に、耳を疑ってしまう。


「遊君の事フる人なんて居るんですか!?」


「あはは、いるいる。ってか、居た。俺、つまんない男だし……」


笑ってはいるものの、目はさみしそうに見える。


「そんな事ない!!」


自分でも、ビックリする位大きな声が出てしまった。

お店に居る人達が、一斉に私を見る。


ヤバッ!!


私は、肩をすくめ小さい声で話しはじめた。


「私、電車の中でしか遊君の事見てないけど、すごい素敵な人だって分かります!!友達と居る時もちゃんと気遣えるし、さっきだって私の事を、ちゃんと奥にエスコートしてくれたし……。だから、自信持って下さい!!」


一気にまくしたて、ハーハー言ってる私。


ダサい!!!


ハッと気がつくと、めちゃくちゃ恥ずかしい事を初対面の遊君に向かって言ってたんだよね!?

今度こそ、本当に終わった……。




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