失ったモノ
わたしという存在

朝、わたしは自分の部屋の中のベッドで眼が覚めます。

そして身支度を済ませ、高校の制服に着替えて、一階のリビングに向かいます。

「おはよう」

わたしが声をかけると、

「おはようさん」

お祖母ちゃんだけが、返事を返してくれます。

同じ部屋にいるのに、お父さんもお母さんも兄さんも妹も、わたしを無視します。

まるでわたしの存在など、無いように…。

わたしは唇を噛みしめ、ソファーに座るお祖母ちゃんの隣に座りました。

「…今日も無視されちゃった」

アハハと苦笑しながら言うと、お祖母ちゃんは笑顔を曇らせました。

「美羽(みわ)ちゃん…」

「んっ、でも良いの。朝食準備してくれるし」

お祖母ちゃんは歯が弱っているので、後から家族とは違う朝食を食べます。

挨拶を無視されても、朝食はいっつもわたしの席に用意されるのです。
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