記憶の中で…

「ユキ。」

「あ…はい。」

「あなたも事情があるにせよ、高校生の男女が同じ部屋で寝るなんて、感心しないわ。他の方法もあったんじゃない?」

「…ごめんなさい。」

「はい!お小言終わり。ナツキ君の話聞くわ。話してちょうだい。」




ナツキの話が終わって、お母さんは大きな溜め息をついた。

「見つからない筈よね。だってドイツにいたんだもの。本当によく記憶が戻ったわね。よかった…。」

お母さんは鼻をすすって、目尻を拭った。

「あなたの言う、『大人に振り回されたくない』気持ちは痛いほどわかるわ。それまでの生活と全く変わってしまったのだから。でも傷ついたのは、あなただけじゃないのよ。あなたの本当の両親は勿論、育ててくれた両親もなのよ。」

「…だって、そんな。原因を作った張本人…。」

「ええ、そうね。だけどそれが間違いだったと気づいたのでしょう。それも謝って済む事じゃない。随分悩んで、あなたに申し訳ない気持ちで暮らしてきたのよ。だからお母さんの具合も良くならないのではない?」




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