記憶の中で…

《ナツキside》

母さんは雨の日も晴れの日も窓の外を眺め、じっとして動かない。

誰が部屋に来ても、声をかけても、たまに振り返る程度で、またすぐ外を見つめてしまう。

何の反応も示さない母さんに嫌気がさし、病院から足が遠退いていた。

ユキのお母さんの言うように、全て話して、俺が許す言葉を口にすれば良くなるのか…?

病室に入って、「久しぶり、…母さん。」と声をかけた。少しこちらに顔を向けかけたものの、またすぐに外を見つめた。

俺は一方的に話しかけた。

「しばらく顔見せなくてごめんな。あの…俺、なくした記憶戻ったんだ。父さんから全部聞いた。」

すると、僅かに手が動いて、ベッドのシーツを握り締めた。

「母さん?」

ゆっくりと首が動いて、母さんの瞳が俺を捉えた。大きく見開かれた目や、少し開いた唇から驚いている様子が見て取れる。

「俺の声、ちゃんと聞こえてたんだ。」




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