御曹司の溺愛エスコート
テーブルを2人で囲んで自分の作った料理を食べてもらっていると変な感じがした。


昔に戻ったみたい。


「和食じゃなくてごめんなさい」

「なにを言っている? 桜が作ったビーフシチュー美味しいよ。かなり煮込んだんだろう?」


作り始めた時間はそれほど早くなかった。
蒼真が帰って来るのが遅かったのだ。


その間、IHの熱でコトコトとビーフシチューは煮込まれていた。


このマンションがオール電化で良かった。


桜はまだ火を直視できないのだ。


手術室に入って何も食べていなかったせいもあり、作りすぎたと思っていた料理は綺麗になくなった。


食事が済み、桜は洗い物をしていた。
食器は食器洗い機に入れずにひとつずつ丁寧に洗う。
2人分の食器。
洗い機に入れるまでもない。


新婚さんみたい。


そうやって幸せを感じると、望の顔が浮かぶ。


胸に突き刺さる痛み。


望くん……ごめんね……今だけだから許して。


幸せな気分になればなるほど、罪悪感に襲われる。





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