あの窓の向こう側

先生の作戦

ガラッとドアを開けて中に入ると、有馬先生がどうぞ、と私を椅子に座らせた。

「俺は確かに澤口君の主治医だけど、黒瀬さんとの話は喋ったりしないから、安心して。」

『…何で波流君の話だって分かるんですか?私と先生は…今日初めて話したと思うんですけど…』

「はは。別に話さなくたって君らを見てたら何となく分かるよ。ま、理由はもう1つあるけどね?」

『何ですか?』

「それはまだ内緒。いずれ分かると思うし。」

全く検討がつかなくて、私の頭の上にはハテナがたくさん飛んでいた。

「まぁまぁそれは良いから。澤口君のことが好きなんだろう?」

好きといきなり言葉にされて、私は急に恥ずかしくなった。

静かに頷く私を見て、有馬先生は

「好きなら好きで良いじゃん?何も悩むことないと思うけど?」
< 63 / 117 >

この作品をシェア

pagetop