色に香りに摩訶不思議
第3話、「カマボコ美和」



「ハサマ!! 危ない!!」

「へ? 何が?」

 ――っていうか、うわぁ~!!

 名前を呼ばれて振り向けば、目の前にはバレーボールの真っ白なボールがあり、そのボールはボクの顔面に命中してくれたのだった。

 ――体育館の冷たい床へ仰向けに倒れてしまったボク……っていうか、メチャクチャ顔痛いし……

 そんな有り様のボクへ向かって誰かが駆け寄ってきた。

「ハサマ、ゴメン。大丈夫?」

「掛け寄って来たのは……っていうか、クラスメイトのカマボコだし……」

「馬鹿ハサマ!! あたしをカマボコって呼ぶな!! それより、大丈夫よね? 馬鹿は死ななきゃ治らないから大丈夫よね?」

「そっちこそ、ボクを馬鹿って呼ぶな!!」

「だって、あたし、あんたが嫌いだもん」

 ――ボクを馬鹿と呼ぶ女子、それは夕月美和(ゆうつきミワ)しか居ないし……

「ちょっと、ハサマ? 目を閉じたまんまだけど……大丈夫よね?」

 夕月美和、意地汚い物言いとは裏腹に、ボクへ投げかけている声、とてつもなく心配そうな声色だった。


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