手の届く距離で

第5節.手紙(純情編)

中学一年の春。

「学級委員は松田くんと川上さんに決まりました!」

しっかり者では無い僕としっかり者の川上。


何もしない僕としっかり者の川上。


「ほら、松田もやって!!」


「あっ、うん…。」


いつもこんな感じだった気がする。



「オレ、川上が好きだな〜・・・。」
「松田は誰かいないの?」

クラスで仲が良かった大谷がおもむろに話し出した。


「別にいないよ。」


「オレ、告白してぇ〜!!!」
「どうすればいいかな?」「ちょっと松田も考えてよ!」


人の恋愛にアドバイスする程経験なんて当然無かった。


「直接言ってくれば?」
「ホラ、そこに居るよ。」


「じゃあちょっと…」

太田は立ち上がる「フリ」をした。

「アホっ!!」
「ムリだよ〜〜〜!泣」


「じゃあラブレターじゃん。」


「それしかねぇなぁ〜〜〜。」


「じゃあ書いたら松田、渡してくれる?」


「はっ!?」
「そんなの自分で渡せよ〜〜。」


「渡せたらこんな苦労はしねぇよ!」
「いいよなぁ〜松田は。」
「いつもチエちゃんと学級委員で一緒に残ったりしてるし…。」
「いつでも渡すトキあるじゃん!」

突然「チエちゃん」に呼び名が変わった。



別に残りたくて残っていたわけじゃ無いのだが・・・。



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