【短編】好き。2
沙耶が教室に帰ってから10分ぐらいが経った頃。ガラガラッと扉が開く音がした。
先生かな?
そう思ってたけど、どうもあたしの予想は当たらないらしい。
また、違った。
「綾」
翔平だった―――…
「翔平、今授業中じゃ……」
「うん。でも、ま……授業より彼女の方が大切じゃん?」
きゅーん……
盗まれた。あたしの心。
「で、大丈夫?」
「もう、全然平気」
「そっか」
そう言いながら翔平はあたしの前髪に優しく触れていて。
あたしの神経はそっちに集中している。