僕の遊びと俺の迷惑

こいつは俺を倒す気があまりないらしい。遊び感覚でここに来ては俺と戦い、満足したら帰って行く。理由はまったく分からない。

「まったく、君は冗談の通じない堅物だね。」

そう言いながらここ、大広間を歩いていく。

「お前は色んなものが軽すぎる。脳は何ミリグラムだ?」

「2かな。」

まったく笑えないのだが。何でこんな奴が勇者などという人から尊敬される立場にいるのだろうか。こいつを勇者と任命した王はどこのどいつだ。訂正しろ。

ある程度俺から離れた勇者はくるりと振り返り、腰に下げていた剣を鞘から抜いた。こいつが片手で持っているそれは何か曰く付きの物であるらしいが、十歳半ばであろうと思われるこいつには大きさが不適応な品だ。大人の男でさえ2人がかりで持ちそうな重さのそれを軽々と持つのだから、やはりただの人間ではないのだろう。頭にいかなかった分の栄養が体にいったのだろうか。

「ねえねえ、早く戦おうよ。」

俺に笑顔を向けながら、剣を振り回している様子にため息しか出ない。

「ため息つくと幸せ逃げるよ?」

もう逃げていると思う。

仕方ないともう1度ため息をついた後、手を下にかざして黒い光と共に禍々しい剣を出現させる。それを握り、構えた。

「そうでなくっちゃね。」

楽しそうに声を弾ませる勇者を睨み、俺は床を蹴った。

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