黒蝶‐総長♀×総長♂‐ Ⅱ
もちろん俺らも慕われていると思う。
でも、俺らへの憧れと月夜への憧れは違うものがあった。
俺らは大抵、遠巻きで見られることが多い。
俺らも下っ端の頃そうだったから、別に違和感どころかこれが当たり前だと思っていた。
青龍は上下関係というものが築きあげられてはいたからだ。
しかし月夜の場合。
下っ端から近づいてきて、目を輝かせながら話しかける。
そして月夜からも、下っ端に優しく話しかける。
それは、おそらく月夜が青龍に入った初日に下っ端へ紹介した時。
……月夜から下っ端へ歩み寄ったからだろう。
俺らはその様子を上から見ていた。
最初は下っ端も戸惑っていたものの、次第に仲良くなっていく様子を。
月夜は下っ端だろうと誰であろうと、自分と同等に見ていたんだ。
上下関係関係なしに。
おまけに月夜は優しいときた。
月夜には、人を惹きつける何かがある。
遠い憧れである、俺ら。
そして、
近い憧れである、月夜。
どちらがいいのかなんて、わかんねえが。
「咲希斗と憐慈は、おとり班への最終確認を頼む」
「りょーかい」
「おう」
「航太はルートとかの最終チェックだ」
「わかったよ」
「海翔と來希は下っ端と一緒に、外の整理と傘下の出迎えをしろ」
「あーいよ」
「…ん」
航太たちに指示をだし、自分も準備に取りかかった。