致死量カカオ
「でも振られたけどね—今までの彼女に素っ気なかった罰じゃない?」
「うっせーよ」
ケラケラ笑い出して「いい気味だ」と言わんばかりの祐子を置いて行くように歩く速度を速めると、背後から追いかけようとすることもなくのんびり歩く裕子が叫んだ。
「頑張って粘れば、次は一緒にランチできるかもよー」
うっせ。
余計なお世話だ。
「お前は彼氏に振られないように粘れよ」
「うっさいな!心配無用よ!」
振り返って言い返せば、裕子は本気で気を悪くしたのかフグみたいに頬を膨らませて大声で叫んだ。
あいつと半年も付き合ってるなんて、あいつの彼氏は懐が大きいんだろうな。
あそこまで自由な女はさすがに知らない。
だからこそこうやって友達でいられるんだろうけど……。だからこそ付き合うのは無理だった。
付き合ったら女らしくなって可愛いところもあるんだからと自分で言っていたけど……。そんなところ見たこともない。
俺もあいつも、付き合っていたときは今の調子そのままだった。
あいつが本当に好きな男の前では変わるかも知れないっていうなら……俺も、誰かの前では変わるんだろーか。
わっかんねえけど。
「粘れって、言われてもなー」