致死量カカオ

胸が痛くて仕方ないんだ。
見てるだけしか出来ない自分が苦しい。


考えるだけで苦しい。
片思いの比なんかじゃない。

好きと同じくらいふくれあがる違う感情。
こんなの知らない。
こんなの知りたくなかった。

ずきっとこめかみが痛んでふらりと足がバランスを崩し、道の端の電信柱に寄りかかった。

だけど一度立ち止まってしまうと、もう動ける体力なんか残ってない。

このまま座り込んでしまいたい。


振られることも離れることもやめようとすることも初めてのことじゃない。


「豊海?」


傍で私を見守る昭平の声がやたら遠くに感じた。


「止まらないんだけど……」


ぼたぼたと顔を濡らしていく涙が、自分のものじゃなければいいのに。


仕方ないんだから。大丈夫だ。ちょっと夢を見ればまたときめいてちょっと幸せな気持ちになれるはずだから。

そのはずなのに……。



涙が止まらないんだ。


恋をしなきゃ。新しい恋を。

高城のことでこれ以上苦しくなる前に。
高城を好きな気持ちが致死量に達してしまう前に。


だれでもいいから。好きにならなきゃ。

手当たり次第妄想すればいいんだ。
そしたら涙も涸れる。




じゃないと困る。
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