致死量カカオ

じゃあもう帰ったら?とか言っていいのかな。俺いつまでここにいたらいいの。

こいつがここにいる限り俺もさすがに席を外せないんだけど。


「私のことずたずたにしてください……」

「は?」


ぼけーっとしていると急に弱々しい声が響いてきて、豊海の方を見た。

相変わらず俺に背を向けているんだけど。

なんなのこいつ。マゾヒストなの?自分を罵って下さいとかそういうこと?マジで怖い。


「俺、そんな趣味ないんで……」

「じゃないと死ぬ」


いじめないと死ぬとかどんなけマゾなの。付き合える自信全然ねえよ。


「えーと……豊海だったよな。豊海、お前さー……」

「――!」


俺が名前を口にすると同時に、今まで微動だにしなかった豊海が勢いよく俺の方に視線を動かした。


早すぎてそのまま首一回転するんじゃないかと思った……。


「なんで……名前……」

「え?あ、ああ、昨日昭平とかいう男が。っていうか、あれ?合ってるよな?」


そう言えば本人には名前の確認してなかったな。

間違いないとは思うけど。


俺の方をじっと見たまま豊海はみるみる顔を青くしていく。本当に死ぬんじゃないかと思う程、こいつずっと体調悪いな。

ちゃんと話出来るのかよ。人と。
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